よこすかキャリア教育推進事業
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とんかつの醍醐味を当店で

65年前、祖父母が始めたとんかつ屋の三代目となり、二代目の両親と共に店を切り盛りして11年になります。開業一年で祖父が他界したため、祖母が暖簾を守り続けました。息子である私の父に店を任せ、時間が出来た祖母は私を寄り合いやお年寄りの交流の場に連れ歩いてくれました。接客や飲食店の仕事が好きなのは、そこで社交性を養われたおかげだと思っています。
時代は昭和から平成へ、下町の飲食店も多種多様になり、バブル崩壊後は、町が全体的に寂しくなっていました。どうしたら、お客様が喜んで足を運んでくださる店になれるか模索していたところ、コンサルタントの方との出会いにより、私達の思いを再発見することが出来ました。当店が自信を持ってお届けしたいのは、良質なラードを使い、食べ応えがありながらも、胃にもたれにくい「とんかつ」です。毎日食べるものではないからこその揚げ物の醍醐味を味わって頂きたい。また、長年足を運んでくださるお馴染みのお客様がお年を召されて少量を好まれるようになってもご満足いただけるよう、揚げ物単品でも定食にできるメニューを両親イチオシで取り入れました。最近は、ご新規の方がホームページを見たと言って来店いただくケースが増えています。その為、見やすい情報の更新を心掛け、ここ二年の間で客足が戻っていると感じています。
 受け継ぐこと、変化することにぶれない思考を持てたので、迷わない自信がつきました。

子どもは純粋でシンプル

 グループディスカッションは、今の子ども達の考えを知りたいと思って参加しました。まず感じたのは、私の中学時代とは対照的なおとなしい子が多いことです。お金がテーマになっていたので、お給料はどのくらい望むか聞いてみると、「25万円あれば堅実です」という子、「ゆとりある暮らしをするには80万円欲しい」という子、何れも金額には根拠が無く、職業も決まっていないという本音や様々なことが見えてきました。お金の話しというのも盛り上がりにはいいとしても、もう少し自分の問題として意識してもらいたいと思い、「中学校卒業後はどうしたいか」「高校生になったらどんな生活を送りたいか」「アルバイトをしたとしてどのくらい稼ぐことが出来るかを計算してみよう」など、近い将来や生きることを話題にしてみました。
 生活の中のトラブルや悩みをどう解決するか一緒に考えてもらうことも、いずれ社会に出たときに、トラブルに打ち勝ち、挫けたとしても潰されない心の持ち方を、関わった大人と共に身につけてほしいと思いました。
 子ども達はお互いの繊細な気持ちを理解し合い、相手を信じて待つ素直な心を持っています。コミュニケーションをとりたいと望んでもいます。大人が思っている以上に純粋でシンプルなのかもしれません。
 最初に私が、おとなしい子どもが増えたと感じたのは、子供がダメなわけではなく、世の中の変化のせいだと思います。社会を作ってきた大人に課題を突き付けられている感じがしました。

生きる力を身につける

 MTTの参加に加え、昨年末に中学生の夢「まんが肉」を数量限定で提供しました。中学生の思いと飲食店がコラボした試みに楽しく協力させていただきました。
 私も同世代の子育てをしています。以前は「なんで?」と思うことが多かったのですが、それは子どもを理解できなかったからで、MTTとして子ども達の話しを聞き、自分の子どもの反発にぶつかり合って、言動をありのままの事実と受け止められるようになってからは、不思議と悩むことは無くなりました。母親目線を少し外して考えられるようになったのは、私の成長です。子育ては自分育てということを、この数年間で子ども達から学ばせてもらいました。
 昔のような不便を感じない生活と引き換えに、自ら考えて行動する力を子ども達から奪ってしまった。その代わりに、生きる力を身につけるキャリア教育があるのだと思います。
 反対されても自分の意見を言える。積極的じゃなくても自分の意思を徐々にでも持ってくれたらよいと思います。

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