よこすかキャリア教育推進事業
ホーム  >  よこすか働き人  >  太田 義昭さん
親子の話が、いかに大切か

私は、県立大学駅近くにある中華末広の二代目で、駅前通りのチーズモックの店長です。中華末広は三代目の次男に、長男は隣で中華まんの店をやっています。イベント用に考案したチーズモックを、いつでも食べて貰える店を本店の近くにオープンして5年が経ちました。人通りが多くガラス張りの店に最初は落ち着きませんでした。一人で切り盛りするようになって、以前と一番変わったのは、お客さんと話すようになったことです。
中華の料理人だった父が独立開業した時代は、周りに出来上がった食べ物を買える店が今ほど多くなかったため大忙しでした。私が子どもの頃に、父が心臓の大病を患いお店は休みがちで、子ども心に、お客様に申し訳なく思っていました。高校を出たら本格的にお店を手伝う事が出来ると思い、父から料理は教わっていましたが、料理を少し甘く見ていた私に、「素人のお前に、何が出来る!」と諭され、プロとして一人前になるにはどうしたらいいか、初めて考えさせられました。その時、十六、七歳の私は、親子の会話がいかに大切か、身をもって痛感しました。
高校を卒業したら、「父のように修行しよう」と、父のつてを頼って、横浜中華街で、日本語が話せない中国人の料理人から料理を学びました。会話はジェスチャーで、指示されるまま何時間も鍋をかき回させられました。言葉が通じないので何を作っているのか分かりませんでしたが、後になって、「あの調味料だったのか」と知ったほどです。教えてもらうというより、見て覚える感じです。早く仕事を覚えたくて、好奇心で何でもやらせてもらったので、出世は早かったと思います。今思うと、我慢強さや一瞬で判断する集中力を身に付けられたのも、その経験があってこそだと思っています。

仕事は外から学ぶ

MTTは、ポスターセッションとグループディスカッションに参加しています。「私のお仕事紹介します」では、チャーハンの基本の作り方をレクチャーし、中学生のグループに作ってもらいます。私が教えるのは、家庭の火力で美味しく作れるプロの業。ご両親が忙しくしていても、中学生ともなれば、家にある材料で自分の食べるものくらい作れるようになってもらいたいです。正しい包丁の使い方や火の扱いを事前に話します。人が生きていくために一番大切な食の基本を覚えてもらえたら、あとは工夫でアレンジは自由です。
職場体験で当店に中学生が来た時も、まかないを自分たちで作ってもらいます。簡単そうに鍋を振っていると思っていたようで、実際はすごく重いという事が分かり驚いていました。
仕事は、学校の中からでは意識しにくい事ですから、外に学ぶのが一番だと思います。

日本を守る仕事に就きたい

 中学校の職場体験で自衛隊に行けることを、グループディスカッションで初めて知りました。敬礼をして自分たちを見送ってくれた姿がカッコ良くて、日本を守る仕事に就きたいと言った中学生が、強く印象に残っています。
 プログラムがきっかけになって店に遊びに来てくれる子もいます。顔見知りになれる楽しみもできました。交流が出来ると、進路の迷いなどを誰に相談していいか分からない、両親共働きで忙しい家庭では、会話も持てずにいる子どもの気持ちを聞くようになりました。私は、自分の気持ちを両親に素直に話して欲しいと思います。親御さんも思いを強いるのではなく、子どもの気持ちを聞いて、結論を出させて欲しいと思います。その上で、親の気持ちを子どもが理解することも大切なんだと思います。

自分の人生は宝物

 私は、料理人の道に進んで良かったと思っています。常にいろいろな事を考えていますし、頭に浮かんだアイディアを形にしたいチャレンジャーで、負けず嫌いな性格です。それでも、一生のうちには出し切れないほど、目指すものは深いものだと思います。私に出来る協力や、いろんなことを、キャリア教育で子どもたちに伝えたいと思っています。その為にできる限りの協力をと思っていますが、苦労話の方が多くなってしまいます。でも、人によってまちまちですが経験として確かなことは、生きていく為に人生のどこかで覚悟を決めなければならないことです。
感じて欲しいのは、自分の人生は宝物だということです。そのことを子どもたちに理解してもらって、宝物になる人生を大切に歩んでいって欲しいと願っています。

ページの上に戻る