よこすかキャリア教育推進事業
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芸術は、癒し

私が、大学を出て就職をした昭和五十年代は、女性の仕事の幅が狭く、四大卒の私が仕事にありつくのは大変でした。地元で唯一、採用されたのは外資系の原子力エネルギー関連会社で、コミュニケーター(広報)として様々な方にエネルギー問題で関わってきました。その後、電力会社への転職で都内へ勤務しました。キャリア終盤では、女性としては珍しかった分野の専門知識と経験を大学生に聞かせて貰えないかと、准教授のオファーをお引き受けしました。次世代に知識を伝える仕事としてとても意気に感じました。頼まれると断れない性格で、様々な経験をさせていただけた事に感謝しています。
現在は家族経営の会社を継ぎ、不動産管理をしながら、和文化伝承・普及をライフワークとしています。和文化は敷居が高いと思われがちですが、「文化」そのものは日々の行動様式だと私は思っています。繰り返し行われている事が文化になると感じています。芸事の鍛錬で人生のバランスをとっている今、芸術に注ぐエネルギーは私にとっての癒しです。

キャリアにマッチしたMTT

キャリア教育のプログラムには私が弊社の代表になって参加するようになりました。理由の一端は、「よこすかで働く大人はみんな子どもたちの先生」というMTT募集の言葉が、私が今までしてきたキャリアにマッチしたことで、地元に恩返しができると思いました。参加してみるとMTTは多種多様な方々、皆さん懸命に生徒さんと話されている姿を見て素晴らしいなと思いました。MTTは、子どもから言葉を引き出す、心の引き出しを開けてあげる感覚で楽しいです。子どもは出かかっている言葉が上手く引き出されると、笑顔になります。出会った生徒さんの環境や情報が分からない中では多くの理解を得られる言葉を選び、優等生的な発言ばかりでは殻を破ってくれないですし、その塩梅を見つける傾聴は大切だと思っています。

置かれた場所で...

ディスカッションでは、できるだけ子どもたちに自由に発言してもらいたいと思い、「何でも話して大丈夫!」という雰囲気の場を作るようにしています。よく聞かれるのは、「将来、
何をやっていいか分からない」という悩みです。私は、「雇ってくれる会社で頑張ってみたら?」と答えています。最近、置かれた場所で頑張る...という言葉を耳にして、私も社会に出た時から経験してきたことで、与えられた事に真摯に向き合うというのも一つの道だと思っています。また、「やりがいは何ですか?」という質問に答えるのもむずかしいと思いました。「やりがい」と言っても人の好みや性格でその価値が違います。私のやりがいは一つの例で、生徒さんは、自分の思いと一致すれば、スパーク出来るでしょう。
その共感をすぐに得るのは難しいでしょうから、沢山の会話の中から一つでも心に残るものがあれば良いと思って話しています。

教育も小さな種まきから

ある学校の担当教諭の、「普段は見られない意欲的な顔が見られて、良かった。」とのご意見は、普段の子どもの姿を知る先生だけに、説得力のある気づきなのだと思いました。思春期まっただ中の中学生は、自意識過剰でセンシティブ。私も繊細だった過去の自分を思い出します。昔と比べると、SNS等の顔の表情が見えないやりとりが多くなっているからなのか、言葉によるコミュニケーション表現が大きく退化してしまっていると感じます。自分の気持ちを相手に誤解のないように伝える語彙力を養うのも、教育や体験からです。教育も小さな種まきから...大人が子どもに与えてあげなければいけない義務です。個々が幸せを感じられる自分の居場所の確立も、とても大切です。
茶道に、一期一会という言葉があります。同じ出会いは二度とないという意味と、同じ私であっても、時と場所が変われば違う私の顔もあるからです。唯一の出会いの大切さを、キャリアプログラムから少しでも感じてもらえたら良いですね。

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