よこすかキャリア教育推進事業
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改めて地元を見直す

私は靴磨き専門店、「Chum's Bar」を、今年の1月に自社ガソリンスタンドの一角にオープンしました。店名の「チャム」は、私の幼い頃からのニックネームです。靴が大好きで、身だしなみを整えても、最後に足元まで気を配れていないと落ち着きません。日常の習慣だった靴磨きを職業として意識したのは、私の靴がキレイだと褒められた事がきっかけでした。知
人からも頼まれるようになり、最初はキレイにするのが楽しくて引き受けていたのですが、次第に仕事にしたいと思うようになりました。私の決意に、当初は、未だに残る靴磨きの仕事のイメージの低さから、周囲に反対されました。相談相手で尊敬している東京・青山の靴磨き職人さんから、「私が次に店を出したいのは横須賀だ」と言われた言葉に、ハッとしました。改めて地元を見直すと米海軍の街で革靴の需要もあるはずなのに、靴に関して相談出来る店がないと気づきました。「私が出店します」と宣言し、横須賀にない店を目指し、フリーとして実績を積み、成果が上がった事で周囲からの承諾を得て、店を出すことが出来ました。
今にして思うと、私の原点は父の背中です。玄関先で自身の靴を磨いている姿を幼い頃から見ていた私は、靴は自分で手入れをするものと自然に思っていました。野球少年だった学生時代も、グローブやスパイクを先輩の分まで磨いていました。社会人になり、初めて買ってもらった革靴は、十三年経った今でも大切に使っています。
現在の靴磨き職人は磨く技術だけでなく、素材の専門的な知識と、サービス業として様々な相談にも対応しなければなりません。始めてみると靴にも増して、鞄の需要が思った以上に多いと知り、相談出来る場所があれば、修理をして使いたいと思う方が沢山いらっしゃいました。他で直せずダメだと諦めていて、最後の砦として、うちに持ち込まれる事もあります。エコロジーの観点からも、家で眠っていた物が再び使えるように見直されるのは嬉しい、何よりキレイになった製品を見て笑顔になるお客さまの顔を見られる事が私の喜びです。

女子が照れなくなった

MTTではいろいろな業種の方とも知り合い、中学生にも職場体験以外の様々な業種を知る良い機会だと思っています。他の地域で横須賀の取り組みを話すと、「いいね」と羨ましがられます。私もこのプログラムは面白いと思い、キャリア教育推進事業が発足した8年前から参加をしています。
長年関わっていると生徒も年々違っているのがわかります。以前は照れて大人しい女子の姿があったのが、最近は、積極的で精神的にもしっかりしている女子が多くなっています。男子は堅実的、本来、男子より女子の方が、コミュニケーション能力が高いのだと思います。
子どもたちは、普段、言われている事でも、MTTのような外から来た大人から叱咤激励される方が、先生や親の言った事の再確認にもなるし、効き目があると思います。中・高校時代は野球漬けだった私自身も勉強する意味は分かっていませんでした。社会に出るとその大切さを感じる事が出来ますが、今の子に理解させるのは難しいと思いました。

良い靴は、持ち主を...

私はプロ野球選手を目指し、道が開けていた矢先、ケガで断念せざるをえなくなり目標を失ってしまった時期もありました。その後、いろんな職業を経験しましたが、今は他の選択肢もある人生で良かったと思っています。
イタリアのことわざで、「良い靴は、履き主を良い場所へ導いてくれる」という、職人の間で語り継がれている言葉があります。職人はこの言葉を胸に仕事をしています。足元から人生を振り返り、靴に対するイメージが少しでも変わってくれる革命が起こせるような発信が出来ればと思っています。
この仕事は、腕一つで店を出せます。自身の努力が見た目で分かる仕事です。靴磨きなど、馴染みがない仕事かも知れませんが、何が自分の身を助けてくれる事になるか分かりません。子どもたちに伝えたいのは、与えられた事をこなすだけじゃなく、ひらめきを鍛える為にも、成長過程では本気で頑張る事や達成感を味わう事が必要で、学生はそのチャンスが沢山あるという事です。

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