よこすかキャリア教育推進事業
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海の秘めたる可能性」に好奇心と憧れ

 私は、(独)海洋研究開発機構(以下、JAMSTEC)が所有している海洋調査船の観測技術員です。研究者と乗船し、調査機器運用の補助やスケジュール管理などの主席研究者のサポートが主な仕事です。陸を離れると忘れ物をしたからと、取りに戻ることもできません。閉鎖された空間で、外からの情報が入りにくくなり、戻ってから初めて聞くニュースも少なくありません。人によってはホームシック、船酔いなど慣れない環境に苦労します。
 自然相手の仕事なので生命の安全が最重要で業務を行なっています。
 観測技術員に興味を持ったのは、小学生のころ父親に連れられJAMSTECの一般公開に行き、観測技術員から話しを聞いたのがきっかけでした。今まで漠然と見ていた海が、自分たちの生活に大きく関わっている事実を知ったのは、子供心に衝撃的でした。海が秘めている可能性に興味を抱き、海に携わる職業が憧れになりました。父が船乗りということもあり、海は身近で、父の影響は大きかったと思います。

素直に反応してくれる純朴さ

私にもMTTとして仕事の話しをする機会が巡ってきました。子ども達は「海の仕事」というと「漁師さん」のイメージが強いらしく、海を調べる観測技術員に最初は反応が薄かったのですが、資料として持っていた海の生物の「深海カレンダー」を見せたのをきっかけに、子ども達の表情が変わり、次々に質問が飛び出しました。興味が湧くと素直に反応してくれる純朴さは、中学生のいいところだと思います。子ども達が積極的に質問をしてくれたおかげで話しが尽きることはなく、時間が足りないほどでした。浴びせられる質問に答えながら気づいたのは、単語の意味を正しく知ってもらうのは、知識をより深いものにするのに大切だということです。例えば「深海」とは、通常太陽の光が届かない深度200メートルより下の海中を言います。一語一句噛み砕いて説明するには時間がかかりますが、中学生がイメージしやすい表現力が、私の方に足りなかったと反省しました。海洋調査の仕事という狭い業界だけに、中学生に弊社の業務を知ってもらえたただけでも何らかの進歩があったと思っています。

自分の長所・短所・やりたいことが分かっていれば大丈夫

 私も自分の中学生時代に大人の仕事を意識したことは無かったと思います。しかし、中学生目線で周りを見ると、いくらでも疑問の種が転がっているので「沢山の仕事でできた世の中の身近な人の仕事から、何か発見ができるかも」と話すと「今度、街をよく見てみようかな」と言ってくれました。仕事のイメージが出来なくても、「働くこと」はどういうことか考えるのも良いと思いますし、職業以外でも疑問に思ったことや興味を引き付けられたことを調べてほしいと思います。年齢を問わず、素朴な疑問と探求心があれば、知識を身につけることができます。
 私も普段から些細な疑問をノートに書き留めるようにしています。少し前に日本の赤サンゴ乱獲のニュースを聞き、知らなかった赤サンゴを調べてみました。一つ理解すると、また次の疑問が生まれ、そうしていくうちに以前勉強したことの復習になり、再確認ができました。業務に慣れてくると見えるものも見えなくなってしまいます。仕事に関わるというのももちろんですが、突き詰めることは、技術者として知識を蓄え、不測の対処に必要なことと認識しています。
 中学生は大事な時期だと思います。私個人としては、自分の長所、短所、何がしたいのかを分かっていれば大丈夫だと思っています。自立に向かう子どもの思いをつぶさず、選択肢を広げさせられるようなアドバイスや見守りが私たち大人の役目だと思います。横須賀は海がある土地なので、私の話しを機に、将来、海の仕事に就いてくれる子どもが出て来てくれると嬉しいですし、さらには、海に関わる仕事が発展してくれると、なおいいと思います。

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