よこすかキャリア教育推進事業
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日本一の床屋を目指した

家業の理容店を継ぎ、昭和三十三年、自分の店を開業した。理容師は中学生の頃からやっていたので、五十年以上仕事を続けてきた。この仕事は快適優美産業。お客様の希望をいかにして具現化するか。また、それだけでなく周りの人から見られた時にその人が持っている良さを引き出し、健康的に輝やかせる。常に先を行って、他の誰にもまね出来ない技術を売る。それは機械化できないし、人の手じゃなきゃだめな仕事。
人が変わればやることも違う。学ぶことが尽きないのがこの仕事の面白いところ。ただただ理容の仕事が好きで、こんな面白いことは辞められない。
「日本一の床屋さん」になろうと三十年間コンテストに出場し続け、賞もたくさんもらったけど、なぜか二位にしかなれなかった。だからこそずっと一位を目指せる。その為に努力したことでいろいろな技術を身につけられた今の自分がいるのだとも思う。

相手があるから頑張ることができる

ポスターセッション(私のお仕事紹介します)では、高価な鋏や鼈甲の櫛を見せた時の子ども達の反応が面白くて、こちらもやっていて楽しくなる。
理容師は、法律に則って仕事をしていますから、「資格を取ることが必要なことや仕事をする為の道具は大切だ」ということに、いかに興味を持ってもらえるか工夫している。
僕が伝えたいのは機械に頼らない人と人のふれあいが大切だということ。人なしではどんな商売も成り立たないと思う。相手があるから頑張ることができる。だから、良くなる方法や生き様を教えてあげたいと思う。

人生は面白いことを探せばもっと楽しくなる

子ども達から「儲かりますか?」と聞かれた時は驚いた。日本一になりたい一心で、「儲かるか儲からないか」なんて考えてもみなかった。そう言われると、お金ではないけど、「腕一本で残したものはあったなー」と振り返ってみられたのも、MTTで受けた思いもよらない面白さなのかも知れない。
 今の子ども達を見ていると無気力に見えるけど、「どうしていいかわからない」のだろうと思う。「失敗した時どうすればいいですか?」とよく聞かれるのは、失敗を怖がっているから、何もかも手を出さない結果なんだね。僕に言わせれば、「失敗がない」方が怖いよね。何でも面白いことを探して取り組めば、何でもできると思うし、その方が人生はもっと楽しくなる。

「勝つといい顔するんだよ」それが楽しみでやっている

 僕が日本一を目指すきっかけになった「新聞のコラム」で読んだ理容の初代チャンピオンと、十年前に話すことができました。その後「教育とは」の論文を読ませてもらってやはり、「教育」は大事だと思った。講師として、長年教える立場を経験したし、僕の店には日本一になりたいと思う子も来る。誰でもなれる世界じゃないけど、なれるように育てたい。「勝つと、みんないい顔するんだよ。その顔が見たい。それが楽しみだし、彼らの夢を満たしてあげたいから続けているんだよね。」
だから、MTTの制度もすごく良いことだと思う。子ども達が、何年もかけて得た知識や技の話しを聞けるのは素晴らしいこと。世の中のことがよくわからなくても、夢や希望が今は無くても、面白いと思ってもらえれば、それも一つのきっかけになるんじゃないかと思う。
仲間やお客様にMTTの話しをすると、「自分達の時代にもこんな経験ができたら、人生が変わっていたかも知れない」と羨ましがる僕らの年代は多いよ。
定年後に遊んで暮らすことを望んでいない年配者はいるし、社会貢献したいと思っている人はたくさんいる。
仕事を廃れさせないためにも、教えてあげられることを次世代に伝えていく。良い物を残していく責任が、僕らにもあるだろうと思う。

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